輝く無気力

本を読んでいる間に思い出した本とは何も関係ない話です

ヤクザときどきピアノ

ヤクザときどきピアノ

『サカナとヤクザ』『ヤクザと原発』などの潜入ルポで知られる52歳のベストセラー・ライターが、今度はピアノ教室に?!

校了明けに観た1本の映画が人生を変えた。

憧れていたピアノをいまこそ弾きたい。

譜面も読めない「俺」が、舞台でABBAを演奏するまでの1年と少しの軌跡。

 

娘を出産したときに感じたのは強烈な人生リセット感だった。今まで生きてきて、色々なことに失敗し、妥協し、見て見ぬふりをしてきた。もっと誠実に生きていれば手に入れられたものもあったはずだが、嘘をついたり誤魔化して楽をしてきた。30を過ぎてまわりを見ると、同じようになんとなく生きてきた人とそうでないきちんと努力を積み重ねてきた人の差は歴然としている。上を見ればキリがないが、今よりもうちょっと上にいけたら良いな…。そんな風にもんやりと成功者へ羨望のまなざしを向ける私に圧倒的なチャンスが巡ってきた。「母」としての人生リスタート。「娘さんを勉強する子にしたかったらまず親御さんが勉強することです」と教育者たちは口を揃えて私の背中を押す。勉強しよう。もう一回。勉強だけじゃない。やってみたいこともある。やろう。娘と一緒に。

 

人生は想像以上に長い。本当に途方もなく長い。想像ができない。やるかやらないか迷ったら絶対にやった方が良いし、行った方が良いし、買った方が良い。…最後に勢いで先週の無駄な買い物の言い訳をしたが、とにかく無が一番良くない。やろうかな、行きたいな、と思うだけでは無なのだ。そんな風に励まされました。面白かったです。おすすめ。

ぼくの宝物絵本

ぼくの宝物絵本 (MOE BOOKS)

絵本は子供だけのものじゃない。会社が辛くても、ページを開けばそこは天国。懐かしい絵本や未知の輝きを放つ絵本に出会い、買って買って買いまくると、夢のように楽しい...古今の名作絵本とその魅力を、オールカラーの図版とともに歌人にしてエッセイの名手がたっぷり紹介。

 

携帯のメモを見返すと10年も前の日付で「穂村弘」とあった。

それしかないのでいったいどんな流れで穂村弘とメモを残したのかは全く不明だし思い出せないのだが、どうしてメモをしたかは覚えている。それは、当時好きだった少し年上の人が「穂村弘」を話に出したからだ。当時の私は教養深くありたいと切望しつつも、いわゆる文化人にはとんと疎くて「寺山修司って誰ですか?ソクラテスならわかります!」みたいな頓珍漢な女だったので(今もさほど進歩はないけど)、その人が話す読んだ本の話、好きな映画の話、音楽の話、とにかくすべてが輝いて聞こえて、すべてを追いかけて吸収して、こんな風に語れるようになりたいと憧れを抱いていた。その人といるときは楽しくてお酒が進み、大変愉快になって全部忘れてしまうため、せめて、せめて、名前だけメモしておいて、酔いが醒めたら調べるぞ…と打った「穂村弘」である。調べないまま10年経った。私の携帯のメモ帳とTwitterの下書きはそんなもので溢れている。

 

彼が穂村弘の何を私に教えてくれたのかは謎のままだが、穂村弘が古い絵本を収集していて、それらはどれも魅力的で、だけれども絶版ばかりで手に入らないということは分かった。文庫も出てるけど絵本が美しいので単行本が良いです。面白かったです。おすすめ。

人は2000連休与えられるとどうなるのか?

人は2000連休を与えられるとどうなるのか?

人生に行き詰まりを感じ仕事を辞めた男・上田。至福の日々も束の間、迫りくる不安に対抗すべくもがきはじめるが――内省と実験の果てに訪れるまさかの「哲学的」展開とは?衝撃の体験談!

 

大学1年生の頃サークルの合宿で千葉の御宿に行った。

そんなに頭の良い大学ではなかったためか先輩たちもそんなに頭が良くなくて、ノリで肝試しをやろうと言い出したはいいものの別に何の準備もしていなかったため、夜になり、雰囲気だけで宿の周りを歩いた。普通に散歩だ。それでも人里離れて街灯も少なく、怖いといえば怖かったような気もする。全員が肝試しという名の散歩から戻り、最後はみんなで稲川淳二を聞こうということになった。「呪いのCDだぜ」と先輩が誇らしげに取り出したところで、ここでも何の準備もしていなかったため、やんややんやの末に車のスピーカーから囁く淳二の声にみんなで耳を傾けるという異様なイベントが始まった。もちろんよく聞こえないし、まともに聞いたことがない稲川淳二を必要以上に恐れていた私たち1年生は少し離れたところではしゃいでいたのだが、すべてがうまくいかないことに怒髪衝天した先輩が

「ねえ!!!!ちゃんと淳二聞いて!!!!!」

と怒鳴った。本当に怖かった。肝が試されたと思う。ということを思い出した。

 

作中に出てくる「覚えている感情をすべて書き出す」という狂気的な自分棚卸作業には大変興味があるけれど、まとまった時間もなければ根気もないのでひとつだけここに書き残しておこう。面白かったです。おすすめ。